2015年11月29日日曜日

iPhoneやApple Watchは臨床研究に使えるか 「Heart & Brain」開発者の狙い

 慶應義塾大学医学部が11月25日にリリースした、不整脈や脳梗塞の検出に関する臨床研究を行うためのiPhoneアプリ「Heart & Brain」は、日本国内で初めて、Appleが用意した医療の研究調査用フレームワーク「ResearchKit」を活用して開発されたものです。

 その目的は、iPhoneやApple Watchで収集した健康データをもとに、不整脈や脳梗塞の早期発見につなげられるかどうかを検証すること。iPhoneユーザーが自由に参加できるこのフレームワークでどういったデータが取れ、そのデータをどういった形で役立てられるかを研究します。

 なんとこのアプリ、慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)の木村雄弘特任助教が自らSwift 2(iOS向けのプログラミング言語)でコードを書いて開発したそうです。この日本初の試みにいち早く取り組んだ木村先生に、その狙いと展望を聞きました。

●一般的な臨床研究とResearchKitを用いた研究の違い

 臨床研究とは、病気の予防からより精度の高い診断、原因究明、治療方法の改善などの目的で、人を対象に医学的なデータを得るために、大学病院を中心に行われている研究です。一般的に、臨床研究の参加者は、主にその病院で治療などを受けている患者です。臨床研究を行う場合、その研究の目的に合わせて対象になる人を選別し、個別に声をかけ、医師や医療スタッフから詳細を説明をしたうえで、自由意志で参加を決めてもらいます。これを「インフォームドコンセント(説明を理解した上での同意)」 といい、臨床研究の大原則とされています。

 多くの手続きを踏んで、ようやく始められるものであるため、日本では臨床研究で大規模なデータを集めるのは困難だといいます。

 「海外の大規模な臨床研究の中には、非常に大きな数の参加者を集めて評価を行っているものもあります。こうしたものは、エビデンスとしての根拠も強いのです。ですが、日本ではどうしても1施設で実施するのには限界があり、1000人以上のデータを集めるような研究は多施設で展開しなくてはならず、なかなか容易ではありません。今までは参加をお願いしても、皆様にご協力いただけるとは限らない、といった状況でした」

 しかし、ResearchKitというフレームワークを用いることで、その状況が大きく変わるといいます。皆が持っているiPhoneでデータが収集できれば、多数のデータを入手できる可能性があるというのです。

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