2015年10月28日水曜日

あなたも疑われている? 敵は身内にあり?――量販店を悩ます「万引問題」の裏側

 大昔から現在に至るまで、多くの量販店を悩ませているのが万引問題だ。現金と交換できる価値を持った品物が正規の手順を踏まずに突然消えうせるのは、業種を問わず売り手にとって大打撃なのは当たり前だが、こと家電量販店にとっては他業種に比べて深刻な問題となる。というのも、PC周辺機器などハードウェアは得てして仕入れ価格が高く、それでいて利益が薄い製品だからだ。

 周辺機器などハードウェアの利益は、売価の10%前後という場合も少なくない。つまり販売価格が2万円だったとして、利益は2000円、残りの1万8000円が仕入れ価格だ。こうした機器が万引によって1台消えると、本体を9台売るのと同じ利益が吹っ飛んでしまう。さらに薄利、例えば利益が5%だった場合は、18台売ってようやくプラマイゼロである。

 これが例えば1台なくなっても2台売れば取り返せるといったレベルなら、「食い逃げされてもバイトは雇うな」的な論法が成立しなくもないが、ハードウェアにこうした飲食店並みの利益率を期待するのは酷だ。しかもそもそもの価格帯が何万円といった高額で利益率の高い製品、例えばサプライやアクセサリ類を売って取り返すには、かなりの上積みを要する。

 前述の例で言うと、吹っ飛んだ仕入れ価格1万8000円を利益率30%のサプライやアクセサリを売って穴埋めしようとした場合、それらが1個1000円とすれば、1万8000円÷300円で60個売ってやっとイーブンだ。しかもこれを特価販売などではなく通常の売価で、かつ何もせずに売れている数量に上積みして売らなくてはいけないわけで、どう考えても不可能である。

 そもそも一定規模を超える量販店であれば、売上の管理は製品のカテゴリごとに行っており、「他の製品を売って穴埋め」という発想がない。普段売れないカテゴリを何らかの施策をもって極端に売りすぎると、1年後に「前年同月比でこのカテゴリをこれだけ売っていたのに今年の体たらくは一体何なんだ」と、自分で自分の首を絞めるのがオチだ。

 こうした事情もあり、量販店は目に見えるところと見えないところ、さまざまな万引対策を取っている。今回はこれらの事例を見ていこう。

●売場のレイアウトがある日ガラリと変わる理由

 万引対策として一般的なのは、防犯タグの取り付け、また古典的なところではガラスケースに入れての展示などがある。これらは確かに有効な対策だが、購入にあたっての品定めの阻害要因となっていることは否定できない。

0 comments:

コメントを投稿