2014年9月22日月曜日

スマホ事業減損で初の無配 消せないソニー首脳の責任論

「正直、話を聞いたときは目の前が暗転しそうになったよ」

 幹部がそうこぼすほど、社内における衝撃は大きかった。

 ソニーは、2015年3月期の最終損益の見通しを、従来予想(500億円の赤字)の5倍近い、2300億円の赤字に下方修正。さらに、1958年の上場以来続けてきた配当を、初めて無配にすると発表した。

 大幅な赤字見通しの最たる要因は、スマートフォンの販売不振が招いたモバイル(MC)分野の減損にある。

 中国をはじめ新興国での販売苦戦が目立ち、将来の収益見通しが大きく低下することを受けて、12年に英ソニー・エリクソンの完全子会社化で組み込まれた営業権、約1800億円を全額減損処理するのだ。

 今後、事業環境が好転せず、さらにモバイルの赤字幅が拡大する可能性もある。

 ソニーはすでに7月末時点で、今期の計画販売台数を引き下げ、減損の可能性にも言及していた。とはいえ、モバイルの営業権全額の減損は「将来見通しが、そこまで厳しかったのか」とネガティブサプライズを生み、発表翌日の同社の株価は、8%も下落した。

丼勘定を許すコア事業

 業績悪化で、初の無配に追い込まれるほど状況が切迫しているにもかかわらず、平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)の記者会見における発言からは、なぜか危機感が伝わってこない。

 当然、業績修正とワンセットで打ち出すべき、モバイル改革の方向性については「普及価格帯の商品を絞り込む」「規模を追わず、収益性を重視する」との表現にとどめ、詳細には触れずじまい。

 コスト削減のため、同分野で全体の15%となる1000人規模の人員削減を打ち出したものの、自身の責任については「不退転の決意で、業績を回復していくのが、私の一番の責任」と、過去にどこかで聞いたようなセリフを繰り返すだけで、役員報酬の一段の削減にすら触れなかった。

 さらには、期初にスマホの年間販売台数5000万台と大風呂敷を広げ、2カ月後に4300万台に大幅下方修正するという丼勘定を露呈した、モバイルの経営陣についても、続投を明言する「おまけ付き」だった。

 赤字拡大の責任論を執拗に避け、あくまで、目下進めている構造改革の一環として、必要な痛みなんだと言わんばかりだが、市場関係者から漏れるのは「あれでは現場の反発をとても抑え切れないだろう」(外資系証券アナリスト)という声だ。

 中国メーカーの勢いが日を追うごとに増す中で、果たしてソニーは、コア事業として位置付けるモバイルをどう立て直し、広げていくつもりなのか。

 平井社長は、ポストスマホ時代も見据えて「積極的に打って出る土台をつくっていかなければいけない事業だ」としているが、すでに社内では、事業環境が厳しく収益の振幅が大きいモバイルの「本体分離論」がささやかれ始めた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅

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