2014年2月19日水曜日

“タフ”なスマホを逆輸入 京セラが狙うビジネス需要

 雪山を駆け回っているのは、ディスカバリーチャンネルの人気番組「サバイバルゲーム」で有名な冒険家、ベア・グリルス。小川に落ちていたスマートフォンを拾い上げ「生き残っていた」と感慨深げに語る。

 手にしていたのは京セラのスマホ「トルク」である。2013年3月に米国で発売し、高耐久性をウリにしたCMで話題を呼んだ端末を、京セラは今年3月にいよいよ日本に投入する。狙うのは法人向けのスマホ市場だ。

 日本メーカーのスマホは、ソニーを除き海外ではさっぱりのイメージがあるかもしれない。しかし、意外なことに、米国で健闘しているのが京セラなのだ。

 調査会社IDCによると、13年1~9月の米国スマホ市場での京セラの出荷台数は390万台。シェアは4.1%と5位で、日本メーカーで唯一トップ5に食い込み、気を吐いている。

 京セラの米国での売れ筋は100~150ドル台で、防水性、耐衝撃性を備えた"タフ"なスマホ。とりわけトルクは、落下や耐振動など9項目の過酷環境下における米国国防総省の軍事規格に準拠し、その特徴をさらに尖らせた。

NEC撤退が誘い水

 だが、なぜいまになってタフなスマホを日本に投入するのか。背景には、NECが昨年スマホから撤退したことにある。

 高耐久性の携帯電話というニッチ市場で、国内で存在感を示してきたのはカシオ計算機だった。

 2000年に「G'z One(ジーズワン)」で参入し、耐久性に優れた同社の腕時計にちなんで「Gショック携帯」の通称で親しまれていた。その後、カシオの携帯電話事業は日立製作所と統合した後、10年にNECに吸収された。

 だが、NECは昨年7月にスマホからの撤退を発表。ジーズワンは12年の冬モデルが最後となった。高耐久性のスマホ市場は"王者"が撤退し、ぽっかりと穴が開いた状態になったのだ。京セラはそこに目をつけたのだ。

 高耐久性のスマホへのニーズは、建設や物流の現場にとどまらず、法人向けでは根強く存在している。

 例えば都内のさわやか信用金庫は、出先でも顧客情報や取引データをやりとりできるよう、2年前から全営業マンに「ジーズワン」を持たせている。顧客回りは徒歩やバイク、自転車の移動が中心。雨の日でも雪の日でも、顧客の軒先で話しながら端末を操作するため、防水性と耐衝撃性が、端末導入の決め手になったという。

 担当者によると「会社支給の端末は、あまり大事に扱われない。その点でも、壊れにくさというのは端末選びの重要なポイントだ」。

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