2013年10月21日月曜日

やはり売れなかったiPhone5cと、法人が求めるスペックをもつiPhone5s

やはり売れなかったiPhone5cと、法人が求めるスペックをもつiPhone5s
2013年10月21日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

AppleがiPhone5cの減産を決めたそうだ。ジョブズ時代にも、Appleは何度か市場のニーズを読み違えて、投入した製品の撤退に追い込まれることはあったから、今回のiPhone5cのケースも長い歴史の中のひとつのミスに過ぎないといえるかもしれない。

ただし、ジョブズ時代のミスは高価格が仇になったものだ。たとえばPowerMac G4 Cubeは、立方体のクリアケースに拡張性を無視しつつも必要十分な高機能を詰め込んだ名機だったが、上位機種であるタワー型のG4とあまり変わらない高価格であったことと、下位機種のiMacもまたデザイン的にすぐれたうえに安かったため、売れ行きが思わしくなかった。しかも、せっかくのデザインが仇になって品質的な問題を引き起こしたことも、販売不振につながった。

しかし、PowerMac G4 Cube自体はナイストライであり、いまだにむだを削ぎ落としたデザインは語りぐさになっている。というよりも、年内に販売予定とされる最新のMac Pro(http://www.apple.com/jp/mac-pro/)は立方体から円筒形に変わったものの、PowerMac G4 Cubeへのオマージュであるといえる。

ところが、iPhone5cは違う。旧型(iPhone5)の設計をチープなプラスティックのパッケージで化粧直ししただけのような製品であり、低価格を武器に新興国市場を席巻するAndroid陣営に対抗するためだけの、純粋な戦術的反応の結果にすぎない。これがせめてプラスティックボディをトランスパラント(透明)なモノにして剥き出しの筐体がうっすら見えるようにでもしていたら、初代iMacを彷彿させていたかもしれない。

結局のところ、多くのAppleファンはiPhone5cではなくiPhone5sを買った。クールなデザインと高機能を兼ね備えたiPhone5sは、ジョブズ時代のインパクトこそないが、それでも世界最高の性能と使いやすさにはいまだに高いブランド力があったわけだ。同時に、性能的にもデザイン的にも凡庸なiPhone5cは、価格戦略的にも凡庸だった。そんなに安くもないのに見た目が安っぽい。それがiPhone5cの評価となった。

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